パリ五輪の開幕を目前に控えた中、男子・女子共に国際強化試合を行いました。
男子はドイツ、セルビアと戦い、女子はフランス、ベルギーと戦いました。
残念ながら男女とも2連敗となってしまい、オリンピックの開幕がやや心配な状況ですが、最終戦の様子について僕が見ていて感じたことを書いていきたいと思います。
今回は女子バスケについて書いていきます。
女子強化試合 vs ベルギー
ベルギーはパリ五輪の予選グループでも対戦する相手で、世界ランキングは6位。
日本は9位なので「格上」相手ではありましたが、日本は東京五輪で2位であり、ベルギーにも林のシュートで劇的な勝利を挙げていたため、この試合も期待しておりました。
しかし、結果は以下のとおりでした。
日本 65 – 75 ベルギー
(1Q: 11-26、2Q: 14-15、3Q: 14-19、4Q: 26-15)
試合を見た所感を箇条書きで記したいと思います(すみません、期待が高いため辛口です)。
- フランス戦でもやられまくったピックアンドロールからのゴール下の合わせで何点失点するんだって感じでリードを広げられる
- ↑の原因はツーガードで、ローテーション的にどうしても小さい選手がゴール下でマッチアップする羽目になっていたから(仕向けられたのでしょう)
- ↑の対応なのか赤穂不在だからなのか、エブリンと高田の同時起用を試みていたが、控えセンターはどうするの?(正センターを一人しか連れて行かなかったからね。とか…)
- 赤穂の不在は確かに痛いし、今日の試合は赤穂がいればって場面が多々あったけど、宮澤でその穴は埋まらなかったのだろうか?宮澤の出場時間はわずか3分以下でしたが…
- オフェンスの停滞感が尋常じゃない、何をやろうとしているのかが選手間で共有できていない様子(2022年のW杯の惨劇を思い出す内容)
- 迷いからか生命線の3ポイントが入らず(9/38で23.8%、前半はなんと1/20)
- スイッチされても長くて速い相手ではミスマッチをつけず。ツーガードにした意味はどこへ?
- DFは終始プレッシャーが効いていなかったかな(TOを18誘発しているから悪くはないけど)
- 明るい話題は林のシュートタッチが戻ってきたことくらいかな
まとめると、残念ながらここ2試合は「走り勝つ」こともできていないし、「シューター軍団」とは思えない試合ぶりでした。
何より選手が迷っているように見えるのが印象的で、これは2022年のW杯で12チーム中9位になってしまったあの時の光景によく似たものでした。
これは完全に僕の私見になりますが、恩塚HCの考え方があまり理解できません。
「走り勝つシューター軍団」というコンセプトを何よりも大切にするのはHCとしての信念として構いませんし、それで渡嘉敷を代表候補にさえ入れなかったのは納得できます(僕はそれでも入れるべきだと思いますが)。
ではなぜ、吉田を入れたのでしょうか?全盛期の彼女のプレーぶりや女子バスケ界への貢献度を知っているため、彼女自身には尊敬の念を抱いておりますが、残念ながら今の彼女は走力もシュート力もピカイチではありません。
リーダーシップと経験は確かに貴重ですし、OQTでは恩塚バスケの伝道師として機能したのだと思いますが、町田や宮澤という経験もあって昨シーズンのWリーグで優勝をした二人を入れたチームに吉田は必要なかったのではないでしょうか。
このように、選考の時点でコンセプトとのズレを感じていた僕ですが(このブログの記事をご覧ください)、この疑念を良い意味で晴らしてくれることを願っておりました(OQTのときのように)。
しかし、残念ながらパリ五輪直前の2試合の強化試合では、この疑念は深まるばかりでした。
各クォーターのクロージングで吉田を入れて落ち着かせる恩塚HCの「スクリプト」ですが、ベルギー戦ではTOをして点差を広げられる一因となってしまいました。
ここまで吉田をメンバー入りしたことへの批判を書いてきましたが、まあ決まってしまったものは仕方ないと思いますので、このメンバーで勝てる方法を模索して欲しいと思っていました。
しかし、恩塚HCは何よりも大事にしてきたはずのコンセプトを、エブリンと高田の同時起用という形で見事に破ってしまったのです。
もちろん試合の流れを見てインサイドを厚くすることはアリだと思いますが、だとしたら控えセンターをもう一人入れておくべきでした。でもそうはしなかった。恩塚HCのコンセプトに合わないと判断したからですよね(渡嘉敷という才能を無視したつけがまわってきてしまいました)。
まあ、それでも、試合の状況的に応急処置が必要になったということならまだわかります。いない選手のことを言っても仕方ないですからね。
臨機応変の起用もありということなら、やられ続けているツーガードのローテーションのところも変えるべきでした。しかし、これについては一切変えることはありませんでした。
なぜここにはこんなにこだわるのでしょうか?「走り勝つシューター軍団」というコンセプトを遵守しているから?いやいや、メンバー選考もインサイドの起用法も順守していなかったじゃないですか。
ツーガードをやめて、宮澤を入れる選択肢はなかったのでしょうか?彼女はオールラウンダーで、機動力にも問題ありませんし、インサイドを助けることもできたはずです。控えセンターのエブリンを酷使せず、Wリーグの MVP選手を使って状況を打開できたはずなのです。
なのに、なぜ宮澤を3分も使わないのでしょうか。恩塚体勢で臨んだ2022年のW杯で苦しみ、浮かない顔をしていた宮澤ですが、MVPという称号を得てまた代表に戻ってきてくれたのに(オフには旅行に行く予定もあったというのにね)。
正直、今日の宮澤の起用法については敬意を感じませんでした。上のような状況でありながらも代表のために力を貸してくれようとしているMVP選手に対してすごく失礼だと思いました。
ちなみに、トムホーバスは十分なプレータイムを与えられなかった選手(富樫だったかな)に謝罪したという話がありますが、そのようなコミュニケーションを宮澤とはしたのでしょうか。していたとして、本当に心が通った会話ができたのでしょうか。
プロ中のプロである宮澤のことだからどんな状況でも頑張ってくれると思いますが、モチベーションが下がっていてもおかしくありません(少なくとも、調子は落とすことになるでしょう)。
おわりに
色々とネガティブなことを書いてしまいましたが、ここ2試合の強化試合を見ていてすごく残念な気持ちになったため、「本音」を書かせてもらいました。
ニュージーランドとの強化試合では「走り勝つ」ことができましたが、金メダルを獲るには足りないことを露呈した2試合になってしまったように思います。
何より恐ろしいのが、ただの不調ではなく、上に書いてきたような潜在的な不安要素が表面化したような状態であるということです。
とはいえ、もう選んだメンバーや起きてしまったことは変えられないので、あとは恩塚HCが「魔法」をかけるしかありません
今選手が必要としているのは、「スクリプト」なんかではないと思います(そもそも、スクリプトをもらって嬉しいアスリートって多いのか?)。
選手を宥めて、失いかけた自信を取り戻させる「魔法」を恩塚HCがかけてくれることを願います。
少なくとも、不完全燃焼で終わるようなオリンピックだけにはしないでほしいです(宮澤が特に心配)。とにかく、この2試合から得た教訓を胸に、頑張ってもらいたいものですね。
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