遅まきながら、先月行われた女子バスケ日本代表のオリンピック世界最終予選について書こうと思います。
結果的に言えば、2勝1敗でパリ五輪への切符を手にすることになった日本ですが、対戦相手は強豪国揃いでした。
では早速みていきましょう!
オリンピック世界最終予選 @ハンガリー開催
先に書いたように、パリ五輪の出場を決めた日本ですが、相手は超強豪揃いでした。
日本は世界ランク9位(これも十分すごい)ですが、1試合目のスペインは4位、2試合目のハンガリーは19位、3試合目のカナダは5位でした。
こんな強豪国に対し、日本はどのように戦ったのでしょうか。
僕なりの視点で、各試合を分析していきたいと思います!
vs スペイン ○ (86-75)
<1Q> 日本 26-18 スペイン
- 序盤は一進一退、高さでやられる場面も見られる
- 林のスリーで落ち着き、他の選手のシュートが安定して入る ←これが大きかった
- DFのローテがすごく早い(6人いるかのよう)
- フィジカルで負けていない(この成長は大きい)
- 林のスリーで広がったスペースを突く攻撃ができている
<2Q> 日本 20-18 スペイン
- エブリンのドライブからスタート。やはりスペースが広がっている
- エブリンのエンドワン、盛り上げる ←恩塚ジャパンに足りていなかった要素
- DFが緩くなりシュートが落ち始めると点差が6点差くらいに縮められる
- 5点差まで縮まると日本タイムアウト。しかしタイムアウト後ターンオーバー。なんとか失点は防ぐ
- ターンオーバーが増える一方、スペインはボールが回る
- 林のスリーで流れを断つ
- 赤穂のスーパーリバウンドからの林の3で9点差に戻す ←赤穂の献身的なリバウンドは超効果的
- さらに林がもう一発。前半で5本決めた
- そのスペースを宮崎がドライブ ←スピードをうまく活かせるようになっている。チームとしても個人としても
- 前半は46-36、日本10点リードで終了
<3Q> 日本 23-21 スペイン
- 宮崎のドライブからスタート
- ディフォンスのキレが戻っているが、ゴール下が空くケースが2つ
- エブリンがのっている
- 15点差くらいで試合が流れる ←リードして試合を進めるのは日本の必勝パターン
- エブリンのキャラが大きい、チームに不可欠
- 宮崎のドライブでいい締め方。69-57、日本12点リードで終了
<4Q> 日本 17-18 スペイン
- 入りはオフェンス停滞
- ナイスディフェンスからの赤穂のナイスリバウンド
- 林の3で13点差
- 高田も続いて16点差
- 少しオフェンスが停滞し点差を縮められるも、山本の個人技で14点差に戻す ←世界の強豪に勝つにはこういうのも必要
- 残り1分の時間の使い方に難あり。宮崎のターンオーバーが危ない ←ここは他の選手を出すなどしても良いかもしれない
<総括>
林とマウリがそれぞれ20点、山本が15点、他の選手もバランスよく点数を取る理想的な展開。
おそらく恩塚ジャパン史上ベストゲーム!
毎試合これができるわけではないが、①80点以上取れるペース、②リードして試合を進める は必勝パターンとして覚えておきたい。
vs ハンガリー ● (75-81)
<1Q> 日本 22-13 ハンガリー
- 赤穂のレイアップ、高田の3でいい出だし
- 9-0のランで最高のスタート
- プレッシャーDFで高さにも対応できている
- 林に当たりが来ず ←これが大きかった。代わりにステップアップする選手がいればまだいいが…
- 208センチが出て流れは変わったが、山本のタップシュート、ステファニーのエンドワンなど流れを完全には渡さず
- 22-13と理想的な1Q
<2Q> 日本 10-19 ハンガリー
- 吉田がリバウンドやルーズで貢献 ←存在感だけでメンバーに入れた価値があったとわかった
- 林は当たりが来ず
- 赤穂のリバウンドがすごい。日本の武器
- ようやく林が入って25-13
- 林が連続で決めて28-15 すごくいい流れ
- 広がったスペースを宮崎が攻めてレイアップ、30-18
- 2Qの終わり方が良くない。じわじわゴール下で点を取られ、32ー32の同点で終了 ←これは日本の必勝パターンではない。3Qで盛り返せるのならいいのだが…
<3Q> 日本 16-21 ハンガリー
- 山本のステップバック3で幸先の良いスタート
- しかし相手のORBからのスリーで同点
- ゴール下で得点を取られついに逆転された
- 高田が3をエアするなど、攻撃が停滞 。41-42と逆転を許す
- スイッチされて、インサイドにボールを入れようとして停滞している。4点差つけられる ←この攻撃パターンはこれまでの負けてきた大会でも失敗していた。恩塚ジャパンのよくないところ
- 宮崎のドライブで2点差に詰め寄るも、最後3を決められて48-53。宮崎のドライブのようなプレーが少なかった ←上に書いたように、ポストにゆっくりいれようとするから。
<4Q> 日本 27-28 ハンガリー
- 赤穂のドライブで3点差に詰める ←やっぱりこれだ!
- エンドラインからのプレーで林の3。同点に追いつく
- 宮崎からの赤穂の合わせで2点リード。日本らしいプレーが続く
- 攻守でミスが重なり5点リードされる
- 山本のスリーで2点差に詰め(58-60)、吉田がオフェンスファールを引き出し流れを掴む
- 山本の技ありシュートで追いつく(60-60)も、ゴール下を決められ、続けて合わせも決められ4点差つけられる(60-64)
- またも山本の3で1点差(63-64)。山本タイム
- ハイピックから3を決められ4点差にされる(63-67)
- スペインピックから6点差にされる(63-69)
- 宮崎のレイアップで4点差(65-69)
- ゴール下のミスマッチをつかれ6点差(65-71)
- 宮崎の3で3点差(68-71)
- 激しいディフェンスからスティール。宮崎と高田のピックアンドロールから高田のレイアップで1点差(70-71)
- エンドラインからのパスで3点差にされる(70-73)
- 宮崎のエンドワンで同点(73-73)
- ハンガリーのピックで3。3点差(73-76)
- 赤穂のポストアップでシュートミス ←これは得策ではない
- 相手のオフェンスミスもリバウンド取れず。ファールをしてしまい4点差にされる(73-77)
- 宮崎のドライブで2点差にする(75-77)
- 残り39秒、赤穂のスティール。直後のOFFで宮崎の3はエアボール ←ミスマッチを作って宮崎のドライブか林に3を打たせたかった
- ファールゲームで4点差(75-79)
- 赤穂のドライブはミス ←これも試合最終盤のプレーとしてはベストな選択とは言えないか
- ファールゲームで6点差。75-81で負け。
<総括>
4Qのやり合いをもっと早い時間帯でやりたかった(しかもそれを40分間続ける必要がある)。
また、80点を超えるペースでいかないと厳しい。そして、リードされる展開で試合が進むと最後余力がなくなる。ここ2試合負けている中国戦もそうだった。
vs カナダ ○ (86-82)
<1Q> 日本 20-20 カナダ
- 宮崎の速攻で先制
- 宮崎と山本のドライブ2本ずつ成功で8-6
- スリーは消されている印象。アテンプトが少ない
- 高田がファール2つ ←ここは日本の生命線。本当に気をつけないと
- カナダはオフェンスもディフェンスもガンガンくるスタイル
- 宮崎とドライブが止まらない。フローターも入った ←日本のツーガードを全く止められていない様子
- 互いにやり合って20-20。3は成功なし
<2Q> 日本 30-26 カナダ
- 川井のバックドアからスタート ←スペースが空いている証拠
- 互いにやり合いが続く
- 本橋登場。ディフェンスでの頑張りが見える ←個人的には、もっと使って欲しい選手
- エブリンの好判断が光る。DFがよくみえている
- 宮崎が相変わらず止まらない。すでに10点
- 日本最初のスリーはエブリン。エブリンも9得点
- 赤穂のドライブで35-29。流れは日本に
- タイムアウト後のプレスでターンオーバー誘発 ←理想的な試合運び。リードがあるからアグレッシブに行ける
- 宮崎のドライブからエブリンの3。9点差に
- 日本の1on1に徐々に合わせられ、ブロックされることが増えてきた
- ファール2個の高田登場 42-39
- 宮崎のドライブ、山本の3で47-39
- やり合いが続く
- 山本のプルアップスリーで50-44
- 高田の3つ目のファールで50-46で前半終了 ←高田にして珍しいが、この選手層で3つは絶対×
<3Q> 日本 20-21 カナダ
- 3連続ゴールを奪われ、50-52と逆転される入り ←当然理想的ではないが、リードがあるからこの程度の「傷」で済んだ
- オフェンスが停滞している
- 日本の最初のゴールは山本のレイアップ。52-52
- やり合いが続く ←これが何よりも大切
- 吉田のピックアンドロール、ゲームコントロールが効いている
- 速攻で吉田のパスから山本の3が決まる。63-58
- 連続で決められ、63-63 で日本タイムアウト。「やられたらやり返せ」の声が飛ぶ
- やり合いが続き、70-67で終了 ←これは理想的な展開。やり合いの中でリードを作れたこともそうだし、相手を消耗させられた
<4Q> 日本 16-15 カナダ
- ハイピックからの宮崎のドライブで先制
- 高田4つ目、8:38 ←ものすごく苦しい展開。致命的にもなりえた
- 相手ガードファールアウト 7:40頃
- やり合いが続く
- 6:30頃、チームファール4個(75-72) ←無駄なファールは良くないが、ある程度仕方ない展開か
- 吉田がミスマッチを見つけ、マウリの得点(79-74)
- 赤穂のおしいドライブはミス、相手の速攻が決まり79-79。直後の山本もシュートミス、相手もミスで膠着状態。
- お互い苦しい中、宮崎のドライブが決まる(81-79)
- ミスマッチを作り、高田のゴール下(83-79)←ミスマッチのポストで点数の期待値が高いのは高田のみか。このメンバーでは
- 2:02、高田ファールアウト。フリースローで83-80
- 日本も決められない中、相手のトラベリングが2回続く。←ここまでのやり合いの成果と思われる
- 宮崎の危ないパスから、山本の技ありレイアップ(85-80)
- 直後、相手のゴール下エンドワン。フリースロー決まらず85-82。27.9秒、日本ボール
- ファールゲームで、1つ沈めて86-82で勝利
<総括>
接戦での勝利を理想的と呼ぶのは語弊があるかもしれないが、このメンバーや現時点での完成度を踏まえると、最高の試合だったと思う。
80点を超えるペースに相手も巻き込むことができた。また、リードを奪われることもあったが、やり合いを続け基本的にはリードをもって試合を進めることができた。
何よりこのプレッシャーの中で、前の試合の敗戦を乗り越えて勝ち切れたのがすごい!!!
まとめ
実はこの大会前、メンバーが発表された時に僕は3つの疑問を持っていました。
- ガードが多すぎるのではないか?
- 吉田はそれほどいい選手なのか?
- ビッグマンが少なくないか?(特に、なぜ渡嘉敷を候補にさえ入れない?)
です。東京五輪後に恩塚さんがHCになり、選手選考もそうですが、何よりワールドカップでの試合を見て、今回の大会も僕はものすごく懐疑的に見ていました(すみません)。
ですが、この3つの疑問のうち、2つは完全に解消されました。
1. ガードが多すぎるのではないか?
山本を2番で起用して2ガードにするプランだったとわかりました。そうすると、確かにこのくらいの人数は必要だったと思いました。
「世界一のアジリティ」で戦うには、ガードの選手はある程度人数をかける必要があるでしょう。
2. 吉田はそれほどいい選手なのか?
ハッスルプレーだけでなく、パス離れがいいガードとして機能することがわかりました(特に、縦にパスを通す力がすごいと思いました)。
また、恩塚HCのバスケをよく知る者として、そしてホーバス監督のような強力な「リーダー」のいない今のチームの「責任者」的な役割として、彼女の存在は必要なのだと思いました。
ただ、ガードが得点でも貢献できないといけない現代の(そしてチームの)スタイルでは、吉田は足りていなかったと言わざるをえません。何本か放ったシュートはすべてショートで、得点面では期待できない動きに見えました。
何より、ガードには優秀な人材がたくさんいますので、彼女たちが吉田の「責任者」的な枠割りを担いつつ、プレーでも(特に得点面でも)引っ張っていくことが理想的であるといえるでしょう。
3. ビッグマンが少なくないか?(特に、なぜ渡嘉敷を候補にさえ入れない?)
これについては大きな疑問が残りました。オコエがいれば幾らか問題を解消できたのかもしれませんが、それでも日本の宝である渡嘉敷を使わないのはもったいないでしょう。
実際、ハンガリー戦では208cmの選手の対応に手を焼いていました。また、NBAなどをみていても、現代バスケであってもリムプロテクターは重要な役割を担っています。
渡嘉敷がいれば、相手ビッグマンのマークをある程度1対1で任せられます。そうすればローテーションの負担を軽減でき、チームDFも綻びがでにくくなるでしょう。
また、ミスマッチを作って平面で勝負する以外にポストアップする展開も狙っていますが、優秀なポストプレイヤーがいないのが現状です。
そこで渡嘉敷が使えば、ミスマッチから得点を取ってくれたり、相手ガードからファールを引き出してくれるでしょう。そうなるとさらに、外からの攻撃が楽になるはずです。
攻守両面において、より優秀なビッグマンが必要です。いないのなら仕方ないですが…せっかくいるのに働いてもらわないのはとてももったいなく思います。
さて、ものすごく長くなってしまいました笑。
色々と書きましたが、とにかくパリ五輪に出場できるようになって良かったです!!(オメデトウゴザイマス)
これで男女共に、日本のバスケ界がさらに盛り上がっていくことでしょう!
今後も応援していきたいと思います:)
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