2023年5月13日土曜日。待ちに待ったIPPONグランプリが開催されました。
最近ないなあと思っていたら、1年ぶりの開催だったようですね。
結果から言えば、バカリズムさんの優勝で終わった今回のIPPONでしたが、とても競技性の高い面白い内容となっていました!
具体的に面白かった内容も踏まえて、Aグループの白熱した戦いを振り返っていきたいと思います^ ^
Aグループ 第1問
「おでんツンツン」「醤油ペロペロ」の彼らをも忘れさせるほどの悪行を教えてください。
これが第1問のお題でした。
やはり圧巻だったのはバカリズムさんでしたね。
個人的に好きだったのが、「ATMジロジロ」(イラストで描いていました)と「香典Pay Pay」という回答笑
これは「おでんツンツン」「醤油ペロペロ」という擬音語の繰り返しの音を使うといういわば「セオリー」に則った回答でした。
このように、与えられたお題の文脈を読み取り、ちょうど良い回答を捻り出せるのがバカリズムさんの最大の強みだと思います。
このことはヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」を想起させますね。
ことばの意味は元から存在するのではなく、私たちがことばを使って参加している「ゲーム」の中で確定されるものであるということです。
IPPONグランプリのお題が生み出す「言語ゲーム」のルールをいち早く察知し、そのルールにおいて最も適切な回答を用意できるのがバカリズムさん。その才能がとてもよく発揮されていたと思いました!
ちなみに、この言語ゲームを自らの言葉で作り出してしまうのがロバート秋山さんだと思います笑
あの破壊力抜群な雰囲気とことばの使い方で、周りのみんなを自分の言語ゲームに巻き込んでしまうのです。今回は少し発揮し切れていなかったように思いますが、破壊力抜群でとても面白いですね!
Aグループ 第3問
漏れそうな時に1分もたせられる意外な方法とは?
これが第3問のお題です。
僕の好きだった回答は、ロバート秋山さんの「カーリングの選手に、股間に向かってヤーッって言ってもらう」(イラスト)です笑
他のプレーヤーはもっと考えた回答が多かったことを考えると、ロバート秋山さんの回答は異質でした。
この異質性・意外性こそロバート秋山さんの真骨頂だと思います。
他の人が言ったら「何を言ってるんだ?」となってしまうことでも、ロバート秋山さんがいうとそれは「新しい言語ゲームの始まり」となってしまうのです。いわばゲームチェンジャーですね。一人で文脈を作り出してしまうほどのことばの「強さ」をもっています。
このことばの強さは笑いにとってもことば自体にとっても大切です(塙, 2019; 吉村, 2017)。ロバート秋山さんのこの魅力に注目して、これから彼(ら)のネタを見てみると面白いと思います!
Aグループ 第5問
天を駆けるペガサス 実際に乗ってみたらガッカリ その理由とは?
この問いの最初の回答はバカリズムさん。シンプルに、「(とにかく)酔う」と答えてIPPONでした笑
これはことばの強度で言ったらそれほど強くない回答だと思いますが、だからこそバカリズムさんは最初に繰り出してきたのだと思います。他の人が強い言葉で回答をした後だと、おそらくより弱い言葉に感じてしまうでしょう。
濃い味の食べ物を食べた後に薄い味のものを食べると味がしないのと同じです。ことばの強度を意識して回答の順番を選んでいる余裕も、バカリズムさんの強さの秘訣なのだと思います。
またここでもロバート秋山さんのパンチの効いた答えが飛び出ました笑。
フリップを出す前に、「靴脱げよ!」などぶつぶつ行った後、「うるさい(〜)」と優し目の回答を言っていました。
これは秋山さんのやり方で、フリップに依存せず、むしろフリップを自分という存在の引き立て役にしています。
同じようなやり方で、「せきばっかり」という回答も繰り出していました笑
やや反則気味にも感じますが、これが彼のパワフルなやり方なのです。
そのロバート秋山さんの破壊の後の回答はバカリズムさん。
「2時間待ち」といったシンプルなものでIPPONとはなりませんでしたが、これはおそらく自分のゲームに引き戻すための作戦だったと思います。
松本人志さんも「こういうことするんだよな〜、原点回帰というか」といったことをコメントしていました。この作戦を松本さんは見抜いているのです。
そのあと霜降り粗品さんのIPPONにならなかった回答を挟んで飛び出たダイアンのユースケさんの回答も秀逸でした笑。
イラストを見せ、「手術終わりなのか、首にこういうのをつけている」と首輪をしたペガサスを見せて爆笑をかっさらってIPPONでした。
そしてこの流れを受けて、空気階段かたまりさんの「結構ちゃんと外の動物のにおいする」も爆笑でIPPONでした笑。
「動物扱いすること」の面白さが伝わる文脈だったからこそ、かたまりさんの回答が際立ったのだと思います。
おわりに
今回はAグループだけのまとめにすることにしました(長くなり過ぎてしまいそうなので途中でプラン変更です笑)。
今回の投稿でいいたかったのは、IPPONグランプリはまさに「言語ゲーム」であるということです。そのゲームのルールをいち早く読み解き、適切な回答を適切な文脈で繰り出せるバカリズムさんの強さは今回の大会ではとても際立っていました。
バカリズムさんが強過ぎて少し霞んでしまいましたが、ロバート秋山さんの文脈に関係なく言語ゲームをいつでも始められる力も、色々なところで光っていました。
こんなふうに見てみると、IPPONグランプリがより面白く感じられると思います!
次回はBグループの振り返りを書きたいと思いますので、お楽しみに☆
参考文献
塙宣之 (2019). 『言い訳: 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』集英社新書.
吉村誠 (2017). 『お笑い芸人の言語学: テレビから読み解く「ことば」の空間』ナカニシヤ出版.
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